So What?

思考の筋トレ...のための読書メモ。

#8:牛島信明(2002)『ドン・キホーテの旅』中央公論新社(中公新書)

永沢という男はくわしく知るようになればなるほど奇妙な男だった。僕は人生の過程で数多くの奇妙な人間と出会い、知り合い、すれちがってきたが、彼くらい奇妙な人間にはまだお目にかかったことはない。彼は僕なんかはるかに及ばないくらいの読書家だったが、死後三十年を経ていない作家の本は原則として手に取ろうとしなかった。そういう本しか俺は信用しない、と彼は言った。
「現代文学を信用しないというわけじゃない。ただ俺は時の洗礼を受けていないものを読んで貴重な時間を無駄にしたくないんだ。人生は短い」
「永沢さんはどんな作家が好きなんですか?」と僕は訊ねてみた。
バルザック、ダンテ、ジョセフ・コンラッド、ディッケンズ」と彼は即座に答えた。
「あまり今日性のある作家とはいえないですね」
「だから読むのさ。他人と同じものを読んでいれば他人と同じ考え方しかできなくなる。そんなものは田舎者、俗物の世界だ。まともな人間はそんな恥ずかしいことはしない。(・・・)」
 『ノルウェーの森』(村上春樹 講談社)より

ノルウェーの森』の永沢先輩に感化されたわけではないけれど、少し時間を経て、「時の洗礼」を受けたものを読むという姿勢は大切にしたい。と思っていて…であるならば小説だったら古典ドストライクなあれかな〜って事で近い内に『ドン・キホーテ』読んでみようと思って、その紹介本を手にとってみた。

以下書評。

RQ:『ドン・キホーテ』のどこがおもしろいの?

以下構成とまとめ

1.作者サルバンテスと『ドン・キホーテ』の関係
牢獄の中でこの小説の最初の構想を得、釈放後、バリャドリードで多くの家族を養いながら前篇を書き上げ、1605年に出版。前篇はたちまち大評判となり、出版した年だけで海賊版を含め6版を数え、1612年英訳、1614年には仏訳が登場。作品の高い評価にもかかわらず、版権を売り渡してしまっていたためセルバンテスの生活は困窮→貧しいまま1616年に没。
2.『ドン・キホーテ』の構造
・多重的なメタフィクション
特に後編ではさらに「前編が出版されて世に出回っている」という設定となっており、登場人物たちが前編の批評をする。
・学歴/聖職者/カトリシズムなど既存の価値観へのアイロニー
・中世の秩序への懐疑の眼差しとして、騎士道物語(=勧善懲悪もの)のパロディー
中世を支える秩序(キリスト教/封建制度/家父長制)に対し、騎士道物語(=勧善懲悪もの)をパロディー化する事によって価値観の懐疑を投げかける。

3.騎士ドン・キホーテのキャラクター論
ドン・キホーテ=狂気の騎士/教養人/夢想家
サンチョ=卑俗な現実主義者/無教養/がさつ者
この真逆の2人の関係を通じて<他者>との出会い、葛藤、相互影響を描く小説。

作品解釈の問題点として:
騎士道物語の読み過ぎで現実と物語の区別がつかなくなり、遍歴の騎士として世の中の不正を正すために旅に出、自分をとりまく全てを騎士道におきかえて認識して暴れ回るドン・キホーテは演技か?本気か?
また、彼が最期に狂気=文学に対する信仰を棄てて死ぬのをどう捉えるのか?
以上が作品解釈上のポイント


読了日:2015/4/19
レート:★★★☆☆

ドン・キホーテの旅―神に抗う遍歴の騎士 (中公新書)

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ドン・キホーテ 全6冊セット (岩波文庫)

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