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思考の筋トレ...のための読書メモ。

#7:村上春樹(2013)『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』文藝春秋

今更ながらに読んだ春樹の長編。
これまで、一応村上春樹の全ての長編は読んできたけれど、『1Q84』(特にBOOK3)がイマイチだったこともあって、読まずに放置していた作品だった。ふと思い立って読んでみたら意外と良くて思わず2回も読んでしまった。

以下感想文。

青春時代の「喪失」と、それと向き合うことによる「回復」の物語。
純粋で無垢だった時期の全能感から喪失の時期へ。ある時、友人達から一方的に絶交され、その傷から立ち直ることを求めて、かつての友人達との再会と物語は、人々が大人になる際に通過する喪失を乗り越えるために人と人の絆を紡ぎ直し、和解へと進んでいく。

喪失と向き合うことについて、つくるの恋人である沙羅の以下の台詞で語られている。

「ナイーブな傷つきやすい少年としてではなく、一人の自立したプロフェッショナルとして、過去と正面から向き合わなくてはいけない。自分が見たいものを見るのではなく、見なくてはならないものを見るのよ」(p.106)

「喪失」と向き合うことこそが、そこからの「回復」なのだというメッセージや喪失を経た大人になっても、イノセンスはなおも生きているのだというメッセージは春樹らしからぬポジティブなものだった。

「すべてが時の流れに消えてしまったわけじゃないんだ」、それがつくるがフィンランドの湖の畔で、エリに別れ際に伝えるべきことーでもそのときには言葉にできなかったことだった。
「僕らはあのこと何かを強く信じていたし、何かを強く信じることのできる自分を持っていた。そんな思いがそのままどこかに虚しく消えてしまうことはない」(p.370)


読了日:
2015/4/13
2015/4/25
レート:★★★★☆

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

1Q84 BOOK1-3 文庫 全6巻 完結セット (新潮文庫)

1Q84 BOOK1-3 文庫 全6巻 完結セット (新潮文庫)