So What?

思考の筋トレ...のための読書メモ。

#2:戸部良一他(1991)『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』中央公論新社(中公文庫)

最近、思うところがあり、久しぶりに読み返した。
読みながら、なんども吹き出しそうになった。なぜか?今眼の前にある現象を言い当てられているような気がしたからだ。皮肉な話ではあるが、名著の持つ普遍性というものを図らずも体験したような感じであった。

以下、本書のサマリー

#RQ*1:日本軍は大東亜戦争において、何故負けたのか?≠何故負けるような戦争に突入したのか*2
→日本軍は大東亜戦争における諸作戦の失敗において、どの様な組織的な失敗があったのか?

#方法:
大東亜戦争の戦局を左右した6つの作戦をケース分析
ノモンハン事件/ミッドウェー海戦/ガダルカナル戦/インパール作戦/レイテ沖海戦/沖縄戦

□個々のケースに共通する日本軍の組織的特性の抽出と両軍の比較

項目 日本軍 米軍
目的 不明瞭 明瞭
戦略志向 短期決戦 長期決戦
戦略策定 帰納 演繹的
戦略オプション 狭いー統合戦略の欠如ー 広い
技術体系 一点豪華主義 標準化
構造 集団主義(人的ネットワーク・プロセス) 構造主義(システム)
統合 属人的統合(人間関係) システムによる統合(タスクフォース)
学習 シングル・ループ ダブル・ループ
評価 動機・プロセス 結果

以上を踏まえた上で
□理論的考察ー組織学習論の観点からー
結論:本書は日本軍の「失敗の本質」を組織学習ができない点(=環境変化への適応能力のなさ)に求めている。

組織の環境適応は、かりに組織の戦略・資源・組織の一部あるいは全部が環境不適合であっても、それらを環境適合的に変革できる力があるかどうかがポイントであるということになる。つまり、一つの組織が、環境に継続的に適応していくためには、組織は環境の変化に合わせて自らの戦略や組織を主体的に変革することができなければならない。こうした能力を持つ組織を「自己革新組織」という。日本軍という一つの巨大組織が失敗したのは、このような自己革新に失敗したからなのである
(p.348)

逆説的でやや皮肉な言い方をすれば、帝国陸海軍は戦略立案・資源調達・組織特性・戦略実行とその成果といった一連の行為を通じて戦略原型(白兵銃剣主義と大艦巨砲主義)を強化したという点では(シングル・ループ的な)組織学習を徹底し、戦略原型(パラダイム)を変更する事に失敗したとも言える*3

読了日:2015/4/19
レート:★★★★★

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

*1:Research Questionの略

*2:なぜ敗けるべき戦争に訴えたのかを問うことは、本書の主旨ではない

*3:p.369参照